眼サルコイドーシス

  • サルコイドーシスの30-60%に両眼性の肉芽腫性ぶどう膜炎を生じる。
  • 本邦のぶどう膜炎で最も多い。
  • ステロイド治療の反応性は良好であるが、慢性再発性の経過をたどる

眼サルコイドーシスの診断基準

≪サルコイドーシスの診断基準と診断の手引き2006,2015≫

6項目中2項目以上で眼病変を疑う。

〔サルコイドーシス眼病変を強く示唆する臨床所見〕:

  1. 肉芽腫性前部ブドウ膜炎(豚脂様角膜後面沈着物または虹彩結節)
  2. 隅角結節またはテント状虹彩前癒着
  3. 塊状硝子体混濁(雪玉状、数珠状)
  4. 網膜血管周囲炎(主に静脈)および血管周囲結節
  5. 多発する蝋様網脈絡膜滲出斑または光凝固斑様の網脈絡膜萎縮病巣
  6. 視神経乳頭肉芽腫または脈絡膜肉芽腫

〔その他の参考となる眼病変〕:

角結膜乾燥症,上強膜炎・強膜炎,涙腺腫脹,眼瞼腫脹,顔面神経麻痺

〔除外診断〕:

結核,ヘルペス性ぶどう膜炎,HTLV-1関連ぶどう膜炎, ポスナー・シュロスマン症候群,ベーチェット病,眼内悪性リンパ腫


≪眼サルコイドーシス国際診断基準≫

  1. 豚脂様角膜後面沈着物または虹彩結節(Koeppe結節、Busacca結節):Mutton-flat keratic precipitates and/or iris nodules
  2. 隅角結節またはテント状周辺虹彩前癒着:Trabecular meshwork nodules and/or tent-shaped peripheral anterior synechiae
  3. 雪玉状または数珠状硝子体混濁:Snowballs or string of pearls in the vitreous
  4. 活動性または非活動性の眼底周辺部の多発性網脈絡膜病巣:Active or inactive multiple chorioretinal peripheral lesions
  5. 網膜血管周囲炎,血管周囲結節または網膜動脈瘤:Nodular and/or segmental periphlebitis and/or macroaneurysms in an inflamed eye
  6. 視神経乳頭肉芽腫または脈絡膜肉芽腫:Optic disc nodule or nodules/granuloma or granulomas and/or solitary choroidal nodule
  7. 両眼罹患:Bilateral involvement

豚脂様角膜後面沈着物、虹彩結節

左:豚脂様角膜後面沈着物

角膜の裏側に

 

Koeppe結節、Busacca結節、snowballなどはこちらを参照。

ぶどう膜炎と内科疾患

網膜血管周囲炎、血管周囲結節または網膜動脈瘤

左:毛細血管の拡張や微小な網膜動脈瘤

右:黄斑部を中心に広範なフルオレセインの漏出

強膜炎、涙腺腫脹

左:強膜炎

右:眼瞼/涙腺腫脹

眼サルコイドーシスの治療

  • 視機能障害に陥る可能性の低い眼サ症の治療は無治療での経過観察かステロイド点眼が中心の加療を行う。
  • 局所療法として眼周囲組織へのステロイド注射が行われる場合もある。
  • しかし一方で眼底や視神経に炎症が及んでいる場合や硝子体混濁が強く視力が低下している場合、虹彩毛様体炎が局所治療に抵抗する場合、眼圧が高い場合などではステロイド内服を必要とする。
  • PSL30-40mg(0.5mg/kg)で開始し、約4週間継続、1~2ヶ月ごとに5mgずつ減量し、5mg以下を目標とする。数ヶ月継続し中止可能となることも多い。
  • 虹彩の水晶体への癒着を防止するために散瞳薬の併用が行われる。
  • ステロイド抵抗性の症例にはMTXやMMF、AZAなどの免疫抑制剤の併用が試みられている。また他臓器同様にIFXの効果も報告されている。

サルコイドーシス治療に関する見解2003には以下の方針が示されている。

 

1. 治療方針

  • 原則としてステロイド剤局所投与(眼球周囲注射を含む)と散瞳薬で治療する.2に述べる病変にはステロイド剤の全身投与を行う.

2. ステロイド剤全身投与の適応

  • 以下のような活動性病変があり,視機能障害のおそれのある場合.
  1.  局所治療に抵抗する重篤な前眼部炎症(重症の虹彩毛様体炎,隅角または虹彩結節が大きく多数,あるいは虹彩上に新生血管を伴う場合)
  2. 高度の硝子体混濁
  3. 広範な滲出性網脈絡膜炎および網膜血管炎
  4.  網膜無血管領域を伴わない網膜あるいは視神経乳頭新生血管
  5. 黄斑浮腫
  6. 視神経乳頭の浮腫,肉芽腫
  7. 脈絡膜肉芽腫

3. 一般的な投与法

  1. 第一選択薬はプレドニゾロンの経口投与
  2. 初期投与量は 30-40mg/ 日‚ 連日,重症の場合は 60mg/日‚ 連日
  3. 初期投与量の投与期間は2週間から1カ月
  4.  1~2カ月毎に5~10mgずつ減量
  5. 最終投与量を2.5~5mg/日相当とし,1~数カ月続けて終了する.
  6. 全投与期間は3カ月から1年以上
  • 減量は病勢をみて慎重に行う.投与終了にあたっては,活動性眼病変の沈静化とともに,全身検査データに留意する