注)
①骨髄腫などの高γグロブリン血症でおこる。
②血糖<400mg/dlGlucose 100mg/dl上がるごとに1.6mEq/lのNa低下を認める。
>400では2.4-2.8mEq/lずつ低下。
③マンニトール、グリセオールなどの高浸透圧性の輸液は細胞内外の浸透圧差を生じ細胞外に水を移動させる
④細胞外液量の評価法は別に項目を掲げる(輸液と細胞外液量の評価)
⑤慢性腎不全におけるNa保持能の低下を反映する。進行した慢性腎不全、海綿腎、多発性嚢胞腎、鎮痛剤腎症、慢性腎盂腎炎、閉塞性腎症でおこりうる。
⑥利尿薬はループ利尿薬よりサイアザイド系利尿薬で起りやすい。サイアザイド系利尿薬はADH分泌を刺激してSIADHの原因にもなりうる(細胞外液量正常の低Na血症)、高齢者の女性に多い
⑦尿細管性アシドーシス、アルカローシスでみられる。
⑧糖尿病性ケトアシドーシスではketon尿、アルコール性ケトアシドーシスではacetoacetate尿、飢餓ではβ-hidroxybutyrate尿を生じ強制的にNa排泄を引き起こす。
⑨クモ膜下出血などで稀に低張性低Na血症、低尿酸血症、細胞外液量やや減少~正常のSIADHに似た病態を示すことがある。腎でのNa利尿が亢進しているので水制限をかけてはいけない。
⑩嘔吐、下痢、胃液吸引、消化管ドレナージ
⑪カリウム欠乏が低ナトリウム血症の原因となることは非常に重要である。細胞内の主要な浸透圧物質であるKの減少により浸透圧低下のため細胞内から細胞外液へ水が移動するため低Na血症がおこる。治療はK補充。
⑫サードスペースとは細胞内でも細胞外でもない第3のスペースという意味であるが、現実的には細胞内、細胞外とも水、電解質の迅速なやり取りが乏しいスペースと解釈するのが妥当。イレウスでの腸管内用液、多量の胸腹水、出血、筋挫滅症候群、静脈閉塞などで生じる。
⑬SIADH(ADH不適切分泌症候群)は低ナトリウム血症の原因で最も多い。診断は基本的には除外診断である。
⑭ADH分泌の浸透圧域値が正常より低い値でresetされている病態。SIADHの亜型でSIADHの20%を占めるとされる。血清Na120~130mEq/lに維持されるため症状がない限り治療を要しない。結核、頚椎損傷、低栄養が原因として多い。その他上記のSIADHの原因疾患によっても起こされる。
⑮MRHE(mineralocirtuciud responsive hyponatremia of the elderly;高齢者鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症)は加齢によるレニン・アルドステロン系の反応性の低下によってNa保持機能が十分働かなくなり代償的にADHが分泌される病態である。高齢者では非常に頻度が高く(高齢者SIADHの1/4)多くはSIADHと診断されている。やや脱水傾向にあるため水制限を行うと脱水が顕在化するため禁忌である。フロリネフ0.1~0.3mgを治療に用いる。高塩分食で治療してもよい。
⑯粘液水腫(甲状腺機能低下症)では、GFRが減少するため、近位尿細管の再吸収増加、AVP分泌増加するため自由水排泄障害が生じ低Na血症となる。
⑰まず、原因不明の低Na血症を見たときは一度はグルココルトコイド欠乏(=副腎不全)を疑う必要がある。特に高齢者では頻度が高い。糖質コルチコイドによるAVP分泌抑制作用が低下するため低Na血症を生じる。非ストレス時には正常でもストレス時に十分な分泌ができないことがある。副腎不全の症状検査所見は倦怠感、脱力感、体重減少、食欲低下、嘔気嘔吐、便秘、下痢、腹痛、発熱、低血圧、関節痛、めまい、筋痙攣、精神症状(記銘力障害、抑うつ、無表情、無気力)、色素沈着、“低Na血症(67%)”、“低血糖が遷延(18%)”“高K血症(55%)”、“CPK上昇(24%)”、など非特異的な症状のみなので積極的に疑わないと診断できない可能性がある。疑ったら迅速ACTH負荷試験を行う。
《迅速ACTH負荷試験》
①合成1-24ACTH250μgを静脈注射する。
②負荷前、および負荷後30分、60分後に血中コルチゾールを測定する。
③血中コルチゾール18μg/dl以上を正常反応とする。