SLEの皮疹は急性、亜急性、慢性に分類される。
急性皮膚ループス(acute cutaneous lupus erythematosus:ACLE)の典型例は蝶形紅斑である。
紫外線暴露で誘発され、消失後は痕跡を残さない。鼻梁でつながり、鼻唇溝よりも内側にでないのが典型例である。
SLE診断時の52%に合併し、疾患活動性とも相関する。全身性に滲出性紅斑が拡がることもある。
水疱性ループスもACLEの病変の一型で約5%に合併する。
蕁麻疹様紅斑を伴って緊満した小水疱や水疱が出現する。
組織学的には好中球浸潤を伴った表皮下水泡で蛍光抗体直接法では基底膜部に一致して線状ないし顆粒状にIgGなどの免疫グロブリン沈着を認める。
結節性皮膚ループスムチン症(nodular cutaneous lupuus mucinosis:NCLM)は真皮にムチン沈着することにより生じる丘疹状皮疹である。SLE患者の2.5%、男性SLE患者では18%にみられる。体幹上部と上腕伸側に好発するが、顔面、下肢にもみられる。
亜急性皮膚ループス(Subacute cutaneous lupus erythematosus :SCLE)も紫外線暴露部位に生じ、瘢痕は残さないが色素脱失が生じることがある。環状紅斑と丘疹落屑型ループスに分けられる。皮膚外症状は関節炎や筋痛など比較的軽症であることが多く、中枢神経ループスや腎炎などの重症例は10%に満たないとされる。
慢性皮膚ループス(chronic cutaneous lupus erythematosus :CCLE)の典型例は円板状皮疹である。
境界明瞭で大小不同の紅斑で色素沈着や萎縮を伴い瘢痕を残す。
頭部に生じる場合は永久脱毛を合併する。SLEの和名である全身性紅斑性狼瘡の”狼瘡”は「オオカミに咬まれたような傷」という意味であるが、円板状皮疹を指している。
疣贅状(過形成)ループスもCCLEの一型で難治性。扁平上皮癌のリスクになるとされる。
深在性ループスは皮下の脂肪織炎で境界不明瞭な淡い紅斑と比較的境界明瞭な硬結を触知する。次第に紅斑が消退し次第に陥凹性局面を残し、時に潰瘍化や石灰化を伴う。
凍瘡様ループスは寒冷暴露により手指や足趾、耳などに生じる凍瘡に似た皮疹である。浮腫性また滲出傾向の強い紅斑で表皮基底層の変化が強くみられ、徐々に角化傾向を示す。真皮の浮腫、血管拡張などの循環障害を主体とした凍瘡様紅斑と区別するという見解もある。凍瘡様ループスも凍瘡様紅斑も通常の凍瘡と違い春以降も持続し難治であることが特徴で、春を超えても持続する”しもやけ”はループスの検索を行う必要がある。
lupus erythematous tumidusは適切な邦訳がない。夏に露光部に多く認められ、比較的男性に多い紅斑または丘疹で表面平滑な浸潤を触れる。慢性の経過を示すが治癒後は瘢痕を残さない。
1982アメリカリウマチ学会分類基準(1982ACR基準)、2012SLICC分類基準(2012SLICC基準)、ACR/EULAR新分類基準案(ACR/EULAR新基準案)で皮膚の項目が採用されているが、取り扱いが若干異なる。
急性期の皮膚病変は1982ACR基準ではACLEの中で蝶形紅斑のみが採用されているが、光線過敏症を別の項目で採用している。2012SLICC基準ではACLEどの病型でも良い。ACR/EULAR新分類基準では顔面の蝶形紅斑と頸部を超えて広がる斑点状丘疹と定めている。
SCLEは1982基準では採用されず、2012基準では急性病変に採用している。新基準案では逆に慢性皮膚エリテマトーデスと同じに扱われている。
慢性病変は1982年基準では円板状ループスを採用。2012SLICC基準では円板状ループスのほかにも増殖性(疣贅性)ループス、ループス脂肪織炎(深在性ループス)、粘膜ループス、lupus tumidus、凍瘡様ループス、円板状ループス/扁平苔癬重複を採用している。ACR/EULAR新分類基準では円板状ループスをSCLEとともに採用している。