≪アナフィラキシーの症状と出現頻度≫
以下の3つのうち1つを満たした場合にアナフィラキシーと診断する。
①皮膚粘膜+(呼吸器 or 循環器) |
皮膚症状(全身の発疹、掻痒または紅潮)または粘膜症状(口唇、舌、口蓋垂腫脹)のいずれかが存在し、急速に(数分から数時間以内)に発現する症状でかつ、a、bのいずれかを伴う。 a)呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素血症) b) 循環器症状(血圧低下、意識障害) |
②アレルゲン暴露+以下2つ(皮膚粘膜 or 呼吸器 or 循環器 or 消化器) |
一般にアレルゲンとなりうるものへの暴露後、急速に(数分から数時間以内)発現する次のa~d症状のうち、2つ以上を伴う。 a) 皮膚・粘膜症状 b) 呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素血症) c) 循環器症状(血圧低下、意識障害) d) 持続する消化器症状(腹部疝痛、嘔吐) |
③アレルゲン暴露+血圧低下 |
当該患者におけるアレルゲンへの暴露後の急速な(数分から数時間以内)血圧低下。 [収縮期血圧低下の定義] ・平常時血圧の70%以下 ・生後1~11ヶ月<70mmHg ・1~10歳<70mmHg+(2×年齢) ・11歳~成人<90mmHg |
初期対応として以下を行う。
①バイタルサインの確認 | 循環、気道、呼吸、意識、皮膚、体重を評価 |
②助けを呼ぶ | 可能なら蘇生チーム、救急隊をコール |
③アドレナリン筋肉注射 |
0.01mg/kg(最大量:成人0.5㎎、小児0.3㎎) 必要に応じて5~15分毎に再投与 |
④患者を仰臥位にする |
仰向けにして30cm程度足を高くする。 呼吸が苦しい時は少し上体を起こす。 嘔吐しているときは顔を横向きにする。 突然立ち上がったり座ったりした場合、数秒で急変することあり。 |
⑤酸素投与 |
必要に応じて、 フェイスマスクか経鼻エアウェイで高流量(6~8L/分)の酸素投与 |
⑥静脈ルートの確保 |
必要に応じて、 0.9%生理食塩水を5~10分の間に5~10ml/㎏、小児なら10ml/㎏投与。 血管漏出により、血管内血漿量が急激に低下。重症時には10分以内に50%低下する。 |
⑦心肺蘇生 |
必要に応じて 胸部圧迫法で心肺蘇生を行う。 |
⑧バイタル測定 |
頻回かつ定期的に患者の血圧、脈拍、呼吸状態、酸素化を評価する。 |
Adrenaline in the treatment of anaphylaxis: what is the evidence? (BMJ.2003;327:1332)
≪表2 アナフィラキシーのABCD≫(林寛之 ステップビヨンドレジデント3より)
A | Airway | 喉頭浮腫 |
B | Breathing | 喘鳴 |
C | Circulation | ショック |
D | Diarrhea | 消化器症状(吐気、下痢、腹痛) |
≪表3 臨床所見による重症度分類≫(アナフィラキシーガイドラインより)
【不適切なアドレナリン投与】
通常の0.5mg筋注では問題は生じないが、急速静脈内投与を行った場合には心室性不整脈、高血圧、肺水腫を生じることがある。但し、アナフィラキシーによる急性冠動脈症候群を生じることもある。
アドレナリンが効かないときには以下の要素を考える。
1.アドレナリンの使用方法が間違っている。
2.アナフィラキシーの進行が急である。
3.アドレナリンの効果を阻害する薬剤
【グルカゴン投与方法】成人1~2㎎(小児0.02~0.03㎎/㎏)を5分以上かけて静注
4.体位が適切でない。
抗ヒスタミン薬
【H1blocker投与方法】ポララミン5~10㎎(小児2.5~5㎎)静注
【H2blocker投与方法】ファモチジン20㎎+生食20ml 静注
β2刺激薬吸入
【投与方法】ベネトリン0.5ml(小児0.1~0.3ml)+生食2ml 10~20分おきに2~3回吸入
副腎皮質ステロイド
【投与方法】ハイドロコートン200~500㎎+生食50ml 30分 6~8時間ごと
ショックが遷延する場合
1、グルカゴン静注【成人1~2㎎(小児0.02~0.03㎎/㎏)を5分以上かけて静注】
2、アドレナリン静注【アドレナリン1㎎+生食10mlを1mlずつ5分毎。血圧が触れるまで。不整脈に備えて心電図モニター必須】
3、ドーパミン【イノバン1~5γ(20γまで)】
喘鳴(気管支痙攣)が遷延
二峰性反応
エピペン
食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(food-dependent exercise-indeced anaphylaxis:FDEIA)
《管理方法》
ヒスタミン中毒
《可能性のある食品》
サバ科 | サバ、マグロ、サンマ、カツオなど |
サバ以外の魚 | シイラ、イワシ、ニシン、カタクチイワシ、マカジキ、アミキリ、サーモン、ブリ、オキスズキ、ハマチなど |
魚類以外 | 鶏肉、ハム、チェダーチーズ、ドライミルクなど |
《参考文献》 救急外来ただいま診断中(p90-105):中外医学社
レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアル:医学書院
日本内科学会雑誌 2016;105:1966-74