好酸球は顆粒球に属し、貪食できない大きな寄生虫の細胞膜を障害する酵素を細胞内顆粒の中に含む。この高裁は寄生虫だけでなく宿主の組織も同様に傷害する。
骨髄由来細胞であり, 末梢血中を循環し.必要に応じて組織の中に入る。GM-CSF. IL-3、IL-5などのサイトカインは骨髄の前駆細胞から好酸球への成熟を促進する。
正常では、末梢血内には平均200/mm3(白血球の1-4%)が存在する。組織中には100倍以上の好酸球が存在していて、脾臓、リンパ節、胸腺、食道以外の消化管に多い。
また、日内変動も大きく、約40%の変動幅があるとされ、早朝は低値で夜間が高い。血中コルチゾール濃度の日内変動に逆相関するためである。
また、住環境の影響もあり、熱帯住民で高いとする報告もある。情緒的なストレスでは減少、運動では増加する。
末梢血の好酸球の寿命は3-8時間、組織での好酸球の寿命は数日間とされる。
組織の好酸球増多が、末梢血の増加と同時に起こるとは限らない。
好酸球は、およそ末梢血で1500/mm3を超えると疾患を引き起こすことが多いが、末梢血好酸球数と組織中の好酸球はかならずしも相関しない。末梢血好酸球数が正常の好酸球疾患もしばしばみられる。
およそ、軽度増加500-1500/㎜3、中等度増加1500-5000/㎜3、高度増加5000以上と定義されている。
蠕虫感染やアレルギー疾患などでは、2型ヘルパーT細胞や2型自然リンパ球が産生するIL-5に反応して好酸球はポリクローナルに増加する。
また造血幹細胞の遺伝子異常により、モノクローナルな増殖を起こすこともあり、好酸球性白血病や慢性骨髄単球性白血病、全身肥満細胞症でみられる。
好酸球は副腎皮質ステロイドホルモン投与されると減少するが、発熱や細菌感染、ウイルス感染でも内因性ステロイドホルモン分泌増加を反映して好酸球は減少する。
日本内科学会の地方演題抄録検索システム「症例くん」で好酸球増多で検索すると2002年9月~2018年8月までで782例が抽出されるが、一覧表にすると以下になる。
学会の症例報告なので、喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎など日常見る疾患は報告されないし、症例数の少ない疾患は偶発的に合併したのかもしれないが、診断困難例に遭遇した時には参考になるだろう。
特発性 |
好酸球増多症候群(62) 好酸球性血管浮腫(13)、Well's syndrome |
自己免疫疾患 | 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(138)、IgG4関連疾患(20)、好酸球性筋膜炎(8)、好酸球性筋炎(3)、シェーグレン症候群(2)、多発血管炎性肉芽腫症、サルコイドーシス、結節性多発動脈炎(2)、若年性側頭動脈炎、Cogan症候群、顕微鏡的多発血管炎、RS3PE |
薬剤など |
[臓器障害] 好酸球性肺炎、好酸球性胃腸炎、肝炎、ANCA関連血管炎、間質性腎炎、collagenotous sprue [薬剤名] アセトアミノフェン、アルガトロバン、イトラコナゾール、インスリン(3)、カンデサルタン、エポエチン、クリゾチニブ、クロピドグレル、サラゾスルファピリジン、シプロフロキサシン、セフトリアキソン、チアマゾール、チクロピジン、テラプレビル、デノタス、テリパラチド、ドキサゾシン、ドネペジル、ニボルブマブ、バンコマイシン、プレドニゾロン、ホラプレジンク、ミノサイクリン、メシル酸ナファモスタット、ネキシウム、ハイネゼリー、メシル酸ナファモスタット、メサラジン(6)、メトトレキサート、メロペネム、ラモトリギン、リオチロニン、レナリドマイド、レボチロキシン(2)、ロキソプロフェン、ワーファリン、潤腸湯、葛根湯/天津感冒片、半夏白朮天麻湯、造影剤(2)、健康食品 薬剤誘発性過敏症候群(DIHS/DRESS):カルバマゼピン(7)、ラモトリギン、メキシレチン(2)、アロプリノール(6)、サラゾスルファピリジン(6)、ST合剤、アセトアミノフェン、トリクロロエチレン、ゾニサミド 透析膜アレルギー、HD関連アナフィラキシー、腹膜透析導入に伴う好酸球性腹膜炎 金属アレルギー(Mn)、薬剤溶出性冠動脈ステント(シロリムス) |
感染 |
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(23)、アレルギー性気管支肺真菌症(カンジダ、スエヒロダケ(4)、Pseudallescheria boydii)、トキソカラ症(20)、ウェステルマン肺吸虫症(20)、糞線虫症(7)、宮崎肺吸虫症(5)、ブタ回虫症、肝吸虫症(3)、肝蛭症(2)、アジア条虫症、ヒロクチ肺吸虫症、イヌ糸状虫、コクシジオイデス症、肺接合菌症、疥癬(2)、急性A型肝炎、ジアルジア症、結核、HIV感染 |
血液 |
好酸球性白血病(17)、血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫(3)、骨髄異形成症候群(3)、Myeloid and lymphoid neoplasm with abnormalities of FGFR1(2)、肝脾Tリンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、成人T細胞性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫(2)、Castleman病(2)、加齢性EBウイルス関連リンパ増殖性疾患、特発性CD4陽性リンパ球減少症、Lymphomatoid granulomatosis、全身性肥満細胞症 |
消化器疾患 |
好酸球性胃腸炎(42)、好酸球性胆管炎(5)、好酸球性胆嚢炎(4)、肝好酸球性肉芽腫症(2)、好酸球性食道炎(2)、原発性硬化性胆管炎(3)、Budd-Chiari症候群(2)、自己免疫性肝炎、GM-CSF産生膵腺房細胞癌、原発性胆汁性胆管炎(2)、肝内胆管癌、喫煙関連間質性肺炎、潰瘍性大腸炎(2)、胃癌播種性骨髄癌腫症、大腸癌による骨髄癌腫症、膵性腹水、肝細胞癌 |
心臓 |
好酸球性心筋炎(23)、好酸球性冠攣縮性狭心症(11)、コレステロール塞栓症(26)、Löffler心内膜心筋炎(4)、好酸球性心外膜炎(4) |
呼吸器 |
気管支喘息(3)、好酸球性肺炎(35)、小細胞癌(2)、好酸球性細気管支炎(2)、胸膜中皮腫(2)、好酸球性胸膜炎、膵性胸水、GM-CSF産生肺癌(2)、肺腺癌、AIDS合併ニューモシスチス肺炎 |
内分泌 |
ACTH単独欠損症(12)、副腎不全(5)、汎下垂体機能低下症(6)、GM-CSF産生甲状腺乳頭癌、甲状腺未分化癌、 |
その他 |
好酸球性蜂窩織炎(2)、腎細胞癌、木村氏病(7)、familial eosinophilia、胸腺腫、辺縁系脳炎、微小変化型ネフローゼ症候群、サルコイドーシス |
()内の数字は報告症例数。
【病歴】
【理学所見】
【検査】
これらの検査の意義については下記の各論を参照。
1、気管支喘息
2、アレルギー性鼻炎
3、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、天疱瘡
4、好酸球性血管性浮腫 (episodic angioedema associated with eosinophilia)
5、木村氏病(軟部好酸球性肉芽腫症)
6、好酸球性筋膜炎(eosinophilic faciitis)
7、寄生虫疾患
8、免疫不全
9、非造血器悪性腫瘍
10、造血器悪性腫瘍に伴う好酸球増多