血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(angioimmunoblastic T-cell lymphoma :AITL)

  • AITL(angioimmunoblastic T-cell lymphoma)はリンパ節での多様な細胞浸潤と高内皮小静脈(high endothelial venule:HEV)と濾胞樹状細胞の著明な増生が特徴的な末梢性T細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma:PTCL)と定義されている。
  • PTCL中の20%、非ホジキンリンパ腫の約1~2%を占めるとされる。

AITLの臨床的特徴

  • AITLの多くは高齢者で認められ、60~70歳台で診断される例が多い。
  • 全身性リンパ節腫脹、発熱、寝汗、体重減少などの全身症状を伴う。
  • 診断時に節外病変として、肝脾腫、骨髄浸潤、協水貯留、胸水貯留、皮膚病変を認める。
  • 検査所見では多クローン性高γグロブリン血症、Coombs陽性自己免疫性溶血性貧血、寒冷凝集素症、クリオグロブリン血症をしばしばみる。
  • 時に多発関節痛や甲状腺疾患などの自己免疫性疾患を伴う。
  • しばしば免疫不全を伴い、治療前や治療中に重篤な日和見感染症を発症することがある。

≪AITLの臨床症状、検査所見の頻度≫

  Alizadeh(2008) Tokunaga(Japan 2012) 
Ann Arbor分類 ⅢまたはⅣ期 81~97% 90%(186/207)
 B症状 64~85% 60%(122/202)
PS≧2 46~72%  
男性 58~67% 64%(132/207)
腫瘤病変(φ≧10cm) 26%  
関節症状 12~18%  
縦隔リンパ節腫脹   52%(107/205)
【節外病変】    
脾臓 55~73%  
肝臓 25~72% 9%(18/192)
肺臓   7%(13/192)
骨髄 47~61% 29%(59/202)
皮膚 21~58% 7%(13/192)
2カ所以上 46% 23%(44/194)
胸水/腹水 26~42% 14%(26/192)
節外病変のみ 1%  
【臨床検査】    
高γグロブリン血症 50~83% 54%(89/166)
単クローン性高γグロブリン血症 8%  
血清LDH高値 66~76% 75%(154/205)
血清β2microgloblin上昇 66%  
貧血 40~65% 61%(126/207)
低アルブミン血症 50% 53%(103/195)
低γグロブリン血症 50%  
白血球増多   28%(57/207)
白血球減少 42~49%  
血沈亢進 42~49%  
好酸球増多 32~39%  
Coombs陽性 9~33% 46%(29/63)
血小板減少 20% 34%(64/189)
CRP> 2mg/dl   46%(86/186)
sIL-2R>4000   64%(121/188)
抗核抗体陽性   28%(28/99)

Alizadeh AA,Clin Adv Hematol Oncol.2008;6:899

Tokunaga,Blood.2012;119:2837

AITLの病理学的特徴

  • 正常リンパ節構造の部分的な消失とリンパ節周囲への腫瘍細胞の浸潤、リンパ節の傍皮質腔の拡大、HEVの分枝状増生、
  • 腫瘍細胞は濾胞やHEVの近傍に集塊を形成し、反応性リンパ球や好酸球、形質細胞、組織球などと混在している。
  • HEVの周囲にはFDCの増生を伴う。
  • 傍皮質領域にB細胞性免疫芽球の増加を認め、これらのBリンパ球はEBV陽性である。
  • 腫瘍細胞はCD3、CD2、CD5の汎T細胞マーカーとともにCD4、CD10、CXCL13、PD-1が陽性であり、CD4陽性濾胞ヘルパーT細胞由来の腫瘍と考えられている。
  • HEV周囲に増生している濾胞樹状細胞はCD21、CD23、CD35、CNA42陽性である。
  • 90%以上でT細胞受容体γ鎖の遺伝子再構成と、75%にmonoclonalityを認める。
  • 20~30%の症例では免疫グロブリンH鎖(IgH)の遺伝子再構成も認める。
  • 染色体検査ではtrisomy3,trisomy5,X染色体の負荷を高頻度に認める。

AITLの治療

  • 標準的治療は存在しないが副腎皮質ステロイド、化学療法、自家造血幹細胞移植、他家造血幹細胞移植などが行われる。
  • ステロイド単独よりは化学療法の方が寛解率が高いとする報告があるAnn Intern Med. 1992;117:364.

AITLの予後

  • 多くの例で完全寛解を達成できるが、再発がしばしばみられる。
  • 生存期間の中央値は化学療法で15~36か月、自家造血器幹細胞移植で約4年とされる。
  • 化学療法後に自家造血幹細胞移植を行った症例での2年生存率67%、4年生存率59%。完全寛解導入例での生存率が高かったJ Clin Oncol. 2008;26(2):218.
  • 本邦の多施設共同研究では207例のAITL症例での発症年齢中央値67歳、3年生存率67%であり、60歳以上、白血球増多、IgA上昇、貧血、血小板減少、節外病変>1は予後増悪因子であった(Blood.2012;119:2837)。
  • 直接死因は感染症が多い。